製品カタログの翻訳で差が出るポイントとは
2026.08.04
update 2026.07.22
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製品カタログの翻訳は、一見シンプルな依頼に見えます。しかし実務では、「翻訳は仕上がったのに、現地の営業担当から使いづらいと言われた」「製品名の表記が資料によってバラバラで、お客様に指摘された」という声が後を絶ちません。
翻訳の精度だけで品質は決まりません。製品カタログには、技術仕様の正確さ・販促としての訴求力・レイアウトの再現性・継続的な更新への対応という、複数の要件が同時に求められます。これらをどう設計・管理するかが、「翻訳物として使えるかどうか」を左右します。
本記事では、製品カタログ翻訳において特に差が出やすいポイントを整理し、発注前後の判断基準としてご活用いただける内容をまとめます。
ポイント1:「誰が読むか」の定義が、訳し方を決める
製品カタログには、大きく分けて2種類の読者が存在します。
– 技術者・調達担当者向け:仕様値・規格・材質など、数値と正確性が最優先
– エンドユーザー・代理店向け:特長や使用シーン、ベネフィットの訴求が重要
この区別が曖昧なまま発注すると、翻訳者は「どちらの軸で訳すか」を自己判断することになります。その結果、内容は正確でも宣伝文として魅力に欠ける文章になったり、逆に読みやすさを重視するあまり、仕様や技術的な正確さが十分に伝わらない文章になったりします。
発注時に明示すべき情報
– 配布先(展示会・代理店・Webサイト・入札書類 など)
– 最終読者の職種・バックグラウンド
– 既存の英語・他言語版カタログがある場合はその提供
翻訳の「トーン」は語感の問題ではなく、読者定義から導き出される設計事項です。
ポイント2:用語統一の有無が、ブランドの一貫性を左右する
製品カタログにはモデル名・シリーズ名・機能名・業界固有の技術用語など、社内で固有の意味を持つ語彙が多数含まれます。これらを翻訳者ごと・案件ごとに異なる訳語で処理すると、以下のような問題が起きます。
– 同一製品が複数の表記で流通し、検索性やブランド認識が低下する
– 海外代理店や顧客が混乱し、問い合わせや誤発注が増える
– 翻訳のたびに「前はどう訳したか」という確認コストが発生する
対策として有効なのが「用語集(グロッサリー)」の整備です。翻訳発注側が用意することが理想ですが、用語集がない場合でも、翻訳会社に「初回案件での用語確認と用語集の書き起こし」を依頼するプロセスを組み込むことが有効です。
用語集は一度作れば資産になります。初期コストをかけても、中長期的な修正・確認コストを大幅に下げる効果があります。
ポイント3:翻訳後のレイアウト工程を、最初から設計に含める
製品カタログはほとんどの場合、InDesignやIllustratorなどのDTPソフトで制作されています。翻訳後には必ずテキスト量の変化・文字幅の違い・折り返しのズレが発生します。
英語→日本語であれば文字数が増えることが多く、日本語→英語であれば逆に文字量が減る傾向があります。これを考慮せずに翻訳テキストをそのまま流し込むと、レイアウト崩れが生じ、修正に大きな工数がかかります。
発注前に確認すべき事項
| 確認項目 | 内容 |
| 元データの形式 | PDF入稿か、InDesign/AI等の編集可能データか |
| DTP対応の有無 | 翻訳会社がDTPまで対応するか、外部制作会社が担うか |
| 修正対応の範囲 | テキスト量の増減に伴うリフロー対応*を誰が行うか |
| 出力形式 | 印刷用PDF・Web用PDF・HTMLのいずれか |
*リフロー対応:テキスト量や画面サイズに合わせて、文字やレイアウトが自動的に再配置されるように調整すること
翻訳とDTPを別々の会社に分離して発注している場合、双方の認識齟齬がトラブルの温床になります。工程の所管を明確にすることが、納期と品質の両方に直結します。
ポイント4:更新・改版への対応を、最初の設計に組み込む
製品カタログは一度作れば終わりではありません。モデルチェンジ・仕様変更・価格改定・市場への追加展開など、定期的な改版が発生します。
この「更新性」を見越した設計をしていないと、以下のような非効率が積み重なります。
– 改版のたびに全文を再翻訳し、コストと納期が毎回かさむ
– どの箇所が変わったか把握できず、翻訳会社への説明に時間がかかる
– 旧バージョンの翻訳資産(用語・訳文)が引き継がれず、一貫性が崩れる
改版運用を見据えた発注の工夫
– 翻訳メモリの蓄積と共有:過去の訳文データを翻訳会社側で管理・流用できる体制にする
– 差分管理の習慣化:改版時に「変更箇所のみ」を明示して依頼できるよう、社内でも変更履歴を管理する
– 担当翻訳者の継続性:同一製品シリーズは可能な限り同じ翻訳者・チームで対応することで、用語や文体の一貫性を保つ
ポイント5:「翻訳のチェック」を誰がどの基準でするか
製品カタログは、翻訳者だけではなく製品知識を持つ担当者によるレビューが不可欠です。仕様の数値・単位・規格表記の誤りは、翻訳の文脈では気づきにくく、専門知識がなければ誤訳と気づけないケースもあります。
発注側で確認すべき体制のポイント
– 翻訳会社側のチェック体制(翻訳者→校正者の2段階か、1名対応か)
– 発注側の技術的なレビュー担当者がいるか
– 最終確認の判断基準(「日本語として自然か」ではなく「仕様として正確か」という軸での確認)
レビューの基準が「読みやすいか」のみになると、技術的な誤りをスルーするリスクがあります。何をもって「OK」とするかの判断基準を、発注前に翻訳会社と共有しておくことが肝要です。
まとめ:製品カタログ翻訳で事前に整理すべき5点
| チェック項目 | 確認の視点 |
| 読者・配布先の定義 | 技術者向けか、エンドユーザー向けか |
| 用語集の有無 | 製品名・機能名の訳語をどう統一するか |
| DTP工程の設計 | 翻訳後のレイアウト対応を誰が担うか |
| 改版・更新の運用 | 翻訳メモリや差分管理の仕組みがあるか |
| レビュー体制と基準 | 技術的正確性をどのプロセスで担保するか |
製品カタログの翻訳は、「語学的に正確に訳す」ことと「ビジネスで使えるものを納品する」ことの間に、工程・体制・設計という大きな差があります。発注前にこれらを整理し、翻訳会社と共有することが、品質と効率の両立につながります。
Writer
テンナイン・コミュニケーション
テンナイン・コミュニケーションは、法人向けに翻訳・通訳サービスを提供しています。契約書・マニュアル・Webサイトなどビジネス文書の翻訳から、会議通訳、翻訳者・通訳者の人材派遣まで幅広く対応。企業の海外展開・多言語対応を支援します。 【Webサイト】https://www.ten-nine.co.jp/



