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海外展開を機に翻訳を始める企業が最初に悩むこと

2026.04.28

update 2026.04.28

海外展開が決まった瞬間、翻訳は一気に優先課題に浮上します。Webサイト、製品マニュアル、契約書、営業資料。翻訳すべきコンテンツは多岐にわたり、しかも「いつまでに」「どの品質で」「誰が管理するのか」が決まらないまま、とりあえず動き出してしまうケースが少なくありません。

そこで起きがちなのが、翻訳の品質ではなく、翻訳の「設計」が問題だったと後から気づくパターンです。訳文そのものの正確性以前に、「何をどう翻訳するか」という判断の枠組みが整っていないことが、混乱の根本原因になります。

この記事では、翻訳を初めて外注する企業の担当者が直面する「最初の悩み」を構造化し、それぞれの判断基準を整理します。

悩み① 「何から翻訳すればいいのか」が分からない

初めて翻訳を発注する担当者の多くが、最初につまずくのがここです。社内には翻訳候補のコンテンツが大量にある一方で、予算・時間・リソースは限られています。

優先順位を判断するには、以下の3軸を使うと整理しやすくなります。

判断の問い
リスク軸翻訳品質の不備が、法的・契約的に問題になるか
売上軸そのコンテンツが直接、商談や購買の判断に影響するか
頻度軸更新・改訂の頻度が高く、運用コストが発生するか

たとえば、規制対応が必要な業界(医療・製造・金融)であれば、契約書・規制文書・安全に関わるマニュアルが最優先です。一方でBtoB向けのサービス企業であれば、Webサイトのサービス説明ページや提案資料の翻訳が商談直結度の高い投資になります。

判断の落とし穴:「社内で重要だと思っているもの」と「海外顧客が必要としているもの」は一致しないことがあります。現地パートナーや代理店に「何が一番読まれるか」を事前確認することも有効です。

悩み② 「翻訳会社をどう選べばいいのか」が分からない

翻訳会社は国内外に無数に存在します。価格帯も幅広く、なぜ同じ翻訳作業でこれほど差があるのか、初めての担当者には理解しにくいのが実情です。

翻訳品質は「訳者のスキル」だけで決まるわけではありません。品質は以下の工程の設計によって担保されます。

– 翻訳(Translation):原文を訳す

– 校閲(Editing):別の専門家が内容の正確性を確認する

– 校正(Proofreading):最終的なレイアウト・表記の確認

この3ステップを踏む「TEPプロセス」が業界標準ですが、低価格帯のサービスでは1人が全工程を担当するケースもあります。どの工程を、誰が担うかを明示してもらえるかが、発注前に確認すべき最重要ポイントです。

選定時に確認すべき実務項目

– 当該言語・分野の実績(類似案件の有無)

– 翻訳者の専門性(産業翻訳か、文芸翻訳かなど)

– 用語集・スタイルガイドの作成・管理体制

– 修正対応の範囲と条件(納品後のサポート)

– 納期の根拠(1日何ワード処理できるか)

悩み③「社内の体制が整っていない」ことに気づく

翻訳を発注したあと、実は社内に多くの業務が発生します。初めて翻訳を進める企業が見落としやすいのが、社内のオーナーシップの不在です。

以下のような問いに、担当者が即座に答えられる状態になっているかを確認してください。

– 承認者は誰か:翻訳された訳文の最終確認を誰が行うのか

– 専門知識の窓口は誰か:技術用語や固有名詞の判断を誰に聞けばいいのか

– 更新管理は誰がするか:原文が変更されたとき、翻訳はどう追随するのか

用語集の整備を最初にやるべき理由

翻訳品質の安定において、「用語集(グロッサリー)」の作成は最初にすべき投資のひとつです。製品名、ブランド用語、技術用語を統一しておかないと、複数の翻訳者・複数の案件を経るうちに訳語がばらつき、後から修正コストが膨らみます。

最初から完璧なものは作れなくても、「翻訳の都度、確定した用語を記録していく」という仕組みを初期段階で合意しておくことが重要です。

悩み④ 「コストと品質のバランスをどう考えればいいのか」が分からない

翻訳の費用は、一般的に1ワードあたり(または1文字あたり)の単価 × 分量で算出されます。言語ペア・専門性・工程によって単価は大きく異なります。

コスト判断で重要なのは、翻訳費用だけで比較しないことです。低単価で発注した場合、以下のような隠れたコストが発生しやすくなります。

– 修正・差し替えの対応工数

– ネイティブチェックの後付け

– 顧客・パートナーからの指摘対応

– 再翻訳のコスト

特に規制文書や対外的な契約書では、品質不備によるリスクが金銭的損害につながるケースもあります。「翻訳費用の最小化」と「発注全体のコスト最適化」は別の問いです。

コスト設計の実務的な考え方

コンテンツの種類推奨するアプローチ
法的・規制文書TEPプロセス+ネイティブ最終確認
製品マニュアル・技術仕様専門分野訳者+編集工程あり
Webサイト・マーケティング資料訳者+ネイティブライターによる意訳対応
社内向け資料・参考訳翻訳のみ(1ステップ)で可

悩み⑤ 「納期の現実感がつかめない」

「英語のページ数でいうと20ページ程度なので、数日でできますよね?」——この感覚は、翻訳の現場とずれていることが多いです。

翻訳の処理能力には業界標準の目安があり、プロの翻訳者が1日に訳せる量は1,000〜3,000ワード程度とされています(分野・難易度による)。そこに校閲・校正・修正の工程が加わると、10,000ワードのドキュメントでも、工程込みで1〜2週間は見込む必要があります。

さらに以下の要素が納期に影響します。

– 原文の確定タイミング(翻訳開始後に原文が変更されると全工程がやり直しになる)

– 確認・承認フローの所要時間(社内レビューに予想以上の時間がかかるケース)

– 翻訳会社の稼働状況(繁忙期・祝日前後の余裕なし案件はリスクが高い)

実務上の推奨:翻訳の発注は、使用日から逆算してバッファを持って開始することを前提にスケジュールを組んでください。

まとめ:「翻訳の設計」に最初の投資をする

海外展開における翻訳の失敗の多くは、翻訳の品質そのものより、翻訳の設計ができていないことに起因します。何を翻訳するか、誰が責任を持つか、用語をどう管理するか、コストと品質をどう整合させるか。これらの判断を最初に整えることが、後の運用コストと品質不備を大きく左右します。

初めての翻訳発注を前にした段階で、以下の問いに答えられる状態になっているかを確認してください。

最初に整えるべき5つの判断軸

1. 翻訳対象の優先順位付けの基準はあるか

2. 発注する翻訳会社の工程体制を確認したか

3. 社内の承認者・専門窓口は明確になっているか

4. 用語集の管理ルールは合意されているか

5.使用日から逆算したスケジュールになっているか

翻訳会社への相談は、「訳してほしい」という依頼の前に、「どう設計すべきか」という相談から始めることで、発注全体のリスクと非効率を減らすことができます。最初の1案件における設計の丁寧さが、その後の翻訳運用の質を決めると言っても過言ではありません。

海外展開は、企業にとって事業の構造そのものが変わる転換点です。その入口で直面する「翻訳をどう始めるか」という問いは、情報をどう設計・管理・運用するかという業務設計の問題です。最初の悩みを「なんとなく解決した」で終わらせず、判断の根拠と体制を整えることが、その後の翻訳運用の質を大きく左右します。もし現在、翻訳の発注方針や体制づくりについて手探りの状態であれば、まずは「どう設計すべきか」という相談から始めることをお勧めします。訳文の依頼よりも前の段階からでも、経験のある翻訳パートナーであれば、優先順位の整理や工程設計の考え方を一緒に検討することができます。

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Writer

テンナイン・コミュニケーション

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