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翻訳のRFP(提案依頼書)に書くべき項目テンプレート

2026.04.16

update 2026.04.24

「とりあえず見積もりを取った。一番安いところに頼んだ。でも納品物の品質に問題があり、手戻りが発生した」
翻訳の外注でこうした失敗が起きる背景の多くは、発注者側が条件を曖昧にしたまま、複数社に同じ「雰囲気の依頼」を出してしまったことにあります。
RFP(Request for Proposal/提案依頼書)とは、発注条件・要件・評価基準を整理し、受注候補者に正確に伝えるための文書です。一般的にはITや建設など大型調達で用いられますが、翻訳においても、品質・コスト・スケジュールの3点のバランスを意識した調達を行う場合には有効な手段です。

特に以下のようなケースでは、RFPの整備が判断の精度と業者選定の公平性を高めます。
– 複数の翻訳会社に相見積もりを取る場合
– 年間契約や継続的な発注を前提とした業者選定を行う場合
– 法務・医療・金融など専門性が問われる領域の翻訳を依頼する場合
– 社内稟議・承認プロセスに調達根拠を示す必要がある場合

本記事では、翻訳のRFPに盛り込むべき項目を体系的に整理し、実務担当者がそのまま活用できる構成テンプレートとしてお届けします。

基本構成テンプレート翻訳RFPに書くべき7つの項目

以下の7つのカテゴリが、翻訳RFPの骨格となります。各項目の「書くべき内容」と「なぜ必要か」を合わせて解説します。

①発注者情報と背景

項目記載内容の例
会社名・部署名発注元の企業名、担当部門
担当者名・連絡先窓口となる担当者の氏名・メールアドレス
発注の背景・目的なぜこのタイミングで外注を検討しているか
現在の翻訳体制内製か外注か、既存ベンダーがいるか

なぜ必要か:

翻訳会社は、背景を知ることで「どのような翻訳者・体制が適切か」を判断します。たとえば「海外展開の加速に伴い翻訳量が増加した」という背景があれば、スケーラビリティを持つ体制を提案できます。背景が不明なまま提案を求めても、表面的な価格提示しか返ってきません。

翻訳案件の概要

項目記載内容の例
翻訳の分野・ジャンル法務契約書、製品マニュアル、マーケティング資料、医療文書 など
原文言語 → 訳文言語例:日本語→英語、英語→日本語&中国語(複数言語対応の有無)
文書の種類・フォーマットWord、PDF、PowerPoint、HTML、InDesign ファイル など
平均的な文字数・ページ数月間の想定ボリューム、1件あたりの規模感
発生頻度・周期随時発生か、定期的に発生するか
機密性のレベル社外秘・極秘情報が含まれるか、NDA締結の要否

なぜ必要か:

翻訳の単価は、分野の専門性・言語の組み合わせ・ファイル形式の処理難易度によって大きく変動します。「法務文書なのか、一般的な社内文書なのか」だけで、想定単価は異なってきます。この情報なしには、業者側も正確な提案ができません。

品質基準と要件

ここが、翻訳RFPで最も書き漏らしが多く、後のトラブルにつながりやすい箇所です。

項目記載内容の例
品質のゴール定義「最終公開物として使用する」「社内共有のみ」「法的効力を持つ契約書」
使用用途顧客向けWebサイト、取扱説明書、内部報告書、規制当局への提出文書 など
用語・スタイルの統一既存の用語集・スタイルガイドの有無、新規作成を求めるか
翻訳メモリの使用既存の翻訳メモリ(TM)データがあるか、新規構築を求めるか
ツールの指定特定のCAT(翻訳支援)ツールの使用を求めるか
校正・チェック工程の要否DTP後の校正、ネイティブチェック、法務レビューなどの有無
品質基準・評価指標LQA(言語品質評価)の基準、エラーの定義と許容範囲

なぜ必要か:

「高品質な翻訳」という言葉は、受け取る側によって解釈が異なります。「法的に正確であること」なのか、「ブランドトーンに合っていること」なのか、「読みやすい日本語であること」なのか——それぞれに対応する工程と人材が異なります。品質の定義を曖昧にしたまま発注すると、「こんな訳は使えない」という着地になりかねません。

④スケジュール・納期要件

項目記載内容の例
標準的なリードタイム通常依頼してから何営業日での納品を想定するか
急ぎ案件の発生頻度24時間以内・即日対応の案件がどの程度あるか
繁忙期・閑散期年間を通じた発注ボリュームの波がある場合は明示
納品の形式・方法メール添付か、クラウドストレージか、専用ポータルか

なぜ必要か:

翻訳会社の体制は、「平常時の量」と「ピーク時の量」の差によって必要なリソースが大きく変わります。月末に大量発注が集中する場合や、急ぎ対応が常態化している場合は、その旨を明示しないと、提案された体制では実際には対応できないケースが生じます。

⑤価格・契約条件

項目記載内容の例
見積もりの単位文字単価、ワード単価、ページ単価、時間単価 など
支払い条件月末締め翌月払いなど、希望する支払いサイクル
契約形態の希望スポット契約か、年間基本契約か、ボリュームディスカウントの検討
コスト上限・予算感年間想定予算の開示(任意だが、提案の精度が上がる)
修正・手戻り対応の費用修正依頼が生じた場合の費用の取り扱い

なぜ必要か:

翻訳の見積もり単位が統一されていないと、価格比較ができません。A社は「日本語文字単価」、B社は「英語ワード単価」で提示してきた場合、そのままでは比べられません。RFPで見積もり単位を統一することで、公正な比較が可能になります。

業者への要件・選定基準

項目記載内容の例
対応実績の要件同業種・同分野の翻訳実績(守秘義務の範囲で)
翻訳者の要件ネイティブスピーカーの関与、資格・専門知識の有無
セキュリティ要件情報セキュリティ認証(ISO 27001など)の有無、クラウド利用ポリシー
品質マネジメント体制社内でのレビュー工程、プロセスの透明性
担当者体制専任PM(プロジェクトマネージャー)の有無、緊急時の連絡体制
提案書に含めるべき事項翻訳サンプルの提出、過去事例、チーム体制図 など

なぜ必要か:

翻訳会社の選定で失敗しやすいのは、「価格だけで決めてしまい、体制や工程を確認しなかった」ケースです。特に専門性が問われる分野では、翻訳者が誰か、どういう工程で品質を担保しているかが直接アウトプットの質を左右します。選定基準を事前に示すことで、業者側も的確な提案を準備できます。

⑦RFPのスケジュールと手続き

項目記載内容の例
RFP配布日
質問受付期限業者からの質問を受け付ける締め切り
質問回答日全業者に共有する形が望ましい
提案書提出期限
選定結果の通知予定
提業者選定の評価方法価格:品質:体制=◯:◯:◯ など、評価軸の開示

なぜ必要か:

スケジュールと選定プロセスが明示されていないと、業者側も提案に注力すべきかどうかを判断できません。また、評価軸を開示することで、価格だけが独り歩きすることを防ぎ、品質・体制を重視する業者からの提案を引き出しやすくなります。

RFPでよくある「書き漏らし」と、そのリスク

RFPを初めて作成する担当者が見落としやすい項目と、それが引き起こすリスクを整理します。

書き漏らし項目発生しやすいリスク
使用用途・公開先の未明示社内共有レベルの訳文が顧客向け資料に使われ、クレームが発生
用語集・スタイルガイドの有無複数案件で表記揺れが発生し、ブランドの一貫性が損なわれる
急ぎ案件の発生頻度の未記載標準体制で受注した業者が緊急対応できず、納期遅延が生じる
修正対応の費用条件の未整理「内容変更による修正」と「訳文の品質不備による修正」の切り分けで紛争
セキュリティ要件の未開示機密情報を含む文書が適切な管理下に置かれない可能性がある

提案書を受け取った後:比較・評価の視点

RFPへの回答として複数社から提案書が届いたら、以下の軸で比較することをお勧めします。

① 質問の内容と質

提案前に業者から寄せられる質問は、その会社の理解力と経験を示します。「翻訳の用途は何ですか?」「想定される読者層は?」といった踏み込んだ質問をしてくる会社は、品質への意識が高い傾向があります。

② 翻訳サンプルの妥当性

可能であれば、実際の原稿の一部(非機密箇所)を用いた翻訳サンプルを提出してもらいましょう。価格よりも先に、アウトプットの質を確認することが重要です。

③ 工程の説明の明確さ

「翻訳→チェック→納品」という大まかな工程だけでなく、**「誰が・何を根拠に・どのような基準でチェックするか」**を説明できる業者は、品質を仕組みで担保しています。

④ 担当者の具体性

「専任PMが対応します」という記述があっても、実際に担当するPMのプロフィールや経験が明示されているかを確認してください。抽象的な体制説明は、実態が見えにくいことがあります。

まとめ:RFPは「発注の設計書」である

翻訳のRFPは、単なる「お願いの書類」ではありません。「何をどのような品質で、どういう条件のもとで調達するか」を発注者自身が整理し、言語化したものです。

この作業を丁寧に行うほど、
● 業者からの提案の質が上がる
● 複数社の比較が公正かつ客観的になる
● 発注後のトラブル・手戻りが減る
● 社内での調達判断の根拠として使える という効果が生まれます。

翻訳発注に不慣れな段階であれば、まず本記事の7章構成を参考に「書けるところから埋める」という進め方をお勧めします。すべての項目を完璧に埋めることよりも、「自社にとって何が重要か」を明確にしていくプロセス自体が、発注精度の向上につながります。

不明点や条件の整理に迷う場合は、RFP作成前の段階で翻訳会社に相談することも有効な選択肢です。「何を決めてから発注すればよいか」を一緒に整理してくれる業者かどうかも、パートナー選びの判断材料になります。

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Writer

テンナイン・コミュニケーション

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