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翻訳会社に最初に送るメールの書き方|担当者が困る依頼の実例つき

2026.07.15

update 2026.07.15

翻訳の失敗事例を遡ると、納品後のトラブルよりも「依頼開始時の情報不足」に根本原因があるケースが少なくありません。

「急いでいたので概算だけ聞いた」「用途まで書かなかった」「ファイルを送れば伝わると思った」——担当者としては十分なつもりでも、翻訳会社側には判断材料が揃っていないことがあります。

最初のメールは単なる「問い合わせ」ではなく、プロジェクト全体の設計を左右する情報の起点です。ここで正確な情報を揃えることが、見積もり精度・スケジュール精度・最終的な品質のすべてに直結します。 このコラムでは、翻訳会社が実際に困る依頼メールのパターンを実例ベースで示しつつ、担当者として何をどう伝えればよいかを整理します。

翻訳会社が最初のメールで把握したい情報

まず全体像を確認します。翻訳会社が見積もりと工程設計のために必要な情報は、大きく以下の6つです。

確認項目具体的に必要な内容
原文言語 → 訳文言語言語ペアと方向性(例:日本語→英語)
原稿のファイル形式と納品形式Excelか、Power Pointか、Wordか
原文の分量文字数・ワード数・ページ数・ファイル数
用途・文書の性質社内共有か、社外公開か、契約書か、マニュアルか
希望納期「いつまでに必要か」の絶対期限
品質要件・制約使用禁止語、トーン、フォーマット維持の要否など

これらが揃っていれば、翻訳会社は初回メール段階で「対応可能かどうか」「概算コスト感」「工程の組み方」をほぼ判断できます。逆に言えば、1つでも欠けると、確認往復が発生し、その分だけ着手が遅れます。

ケース①「資料を翻訳してほしいのですが」

実際に届くメール(例):

「お世話になります。翻訳をお願いしたいのですが、いくらくらいかかりますか?」

何が問題か:

このメールに対して翻訳会社が回答できることは「原文をお送りください」だけです。

ファイルがなければ分量も不明、言語ペアも不明、用途も不明——つまり見積もりの前提がゼロです。 担当者としては「まず金額感を確認してから上司に話を持っていきたい」という意図があることも多いのですが、原稿なしの概算は誤差が大きすぎて意思決定に使えません。

後から「思ったより高かった」「スケジュールが合わなかった」というトラブルの温床になります。

ケース②「急ぎでお願いしたいのですが」

実際に届くメール(例):

「急ぎの翻訳案件があります。明日中にお願いできますか?(ファイル添付)」

何が問題か:

「急ぎ」という表現は主観的で、翻訳会社には判断材料になりません。問題は2点あります。

– 「明日中」が何時を指すか不明(午前中なのか18時なのか23時59分なのか)
– なぜ急ぎなのかの背景がない(プレゼン前日なのか、締め切り延長の余地があるのか)

急ぎ案件では、翻訳者のアサイン・校正工程の設計・特急料金の適否を即座に判断する必要があります。背景情報がないまま着手すると、「急いだのに用途に合わない訳が来た」という結果につながりかねません。

ケース③「前回と同じようにお願いします」

実際に届くメール(例):

「先日と同様の内容です。同じようにやってください。」

何が問題か:

翻訳会社の内部では、案件ごとに担当者・使用辞書・スタイルガイドが異なる場合があります。「前回と同様」という指示は、「前回の条件が引き継がれている」という前提が双方で共有されていなければ意味をなしません。

特に初回問い合わせや担当者交代後のメールでこの表現が使われると、翻訳会社側も確認しにくい状況になります。「同様」の内容を具体的に書き直すことが安全です。

ケース④「訳文のトーンは柔らかくしてください」

実際に届くメール(例):

「読者は一般消費者なので、柔らかいトーンでお願いします。」

何が問題か:

これは情報として不足ではなく、「翻訳者によって解釈がばらつく指示」という点で問題があります。「柔らかい」は主観的な表現であり、文体・語彙選択・敬体/常体の使い分けなど、複数の次元に関わります。

より有効な伝え方は、参考文書(自社の既存コンテンツ、競合サイトの文体など)を添付することや、「です・ます調で」「専門用語を使わず」という具体的な条件に置き換えることです。

「良い最初のメール」の構造

上記の問題を踏まえると、初回問い合わせメールに含めるべき情報は以下のように整理できます。

【翻訳依頼の件】○○株式会社 △△部 ●●

お世話になります。○○株式会社の●●と申します。
翻訳のご依頼についてお問い合わせさせてください。

■ 言語ペア:日本語 → 英語(米国向け)
■ 原文分量:約3,000文字(Word 1ファイル、添付)
■ 文書種別:製品マニュアル(エンドユーザー向け)
■ 用途:自社ECサイト掲載用
■ 希望納期:○月○日(金)17時まで
■ 特記事項:製品名・型番は翻訳不要、英語表記は別紙参照

上記の条件でのご対応の可否と、概算費用・納期をご教示いただけますか。
なお、納期について多少の調整余地があるため、ご相談も可能です。

このフォーマットで情報を揃えると、翻訳会社は初回返信で「対応可能・〇〇円・〇日納品可能」という実質的な回答ができます。確認往復が最小化され、着手までのリードタイムが短縮されます。

担当者がよく見落とす「用途」の重要性

上記の項目の中でも、特に見落とされがちなのが「用途」です。

翻訳は同じ原文であっても、用途によって適切な文体・品質水準が変わります。

用途必要とされる品質水準の特徴
社内共有・参考用内容の正確な把握が優先。文体は問わない場合も多い
プレスリリース・広報ブランドトーンの統一が重要。ネイティブチェック推奨
契約書・法務文書逐語的正確性が求められる。専門法務訳者が必要なケースも
マニュアル・取扱説明書表記揺れ防止・用語統一が重要。過去の翻訳資産の活用が効果的
Webサイト・広告コピーローカライゼーションの観点が必要。直訳では機能しないことも

「翻訳なら何でも同じ」という前提で発注すると、適切でない訳者・工程でプロジェクトが進み、納品後に「使えない」という結論になるリスクがあります。

まとめ:最初のメールで担当者が確認しておくべきこと

チェック項目確認の視点
言語ペアは明確か英語の場合「米国英語か英国英語か」まで明示できると理想
分量は測定済みかWordのツールでもPDFのページ数でも、目安を添えると◎
用途を一言で書けるか「社内資料」「公開用」「提出用」程度でも記載する
納期は「絶対期限」か「希望」か調整余地があるなら明示することで工程の選択肢が広がる
特記事項・制約はないか使用禁止語、固有名詞の扱い、参考資料の有無

翻訳の品質は、翻訳者の能力だけでなく、発注側がどれだけ正確な情報を最初の段階で渡せるかにも大きく依存します。「何を伝えるべきかわからない」という場合は、まず上記の5項目を埋めることから始めてみてください。

不明点があれば「未定」と記載したうえで、翻訳会社に確認を促す形にするだけで、プロジェクトの出発点は大きく変わります。

翻訳依頼の準備段階で不明点がある場合、翻訳会社への相談時に「何がまだ決まっていないか」を整理して伝えることも、スムーズな進行への有効なアプローチです。

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Writer

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